はじめに
ここでは、高橋源一郎著「一億三千万人のための小説教室」(岩波新書)を読んだ感想を書く。 つまり読書日記である。
小説の書き方は自分で見つけるしかない
「小説家は、小説の書き方を、ひとりで見つけるしかないから」(引用、まえがきvページ)、 この言葉が胸に刺さる。 私はこれまで「小説の書き方」の本をいくつか読んできた。 なぜかと言えば、それは小説の書き方が知りたかったからある。
これまでは、何らかの方法について知りたいときは、本やインターネットで調べたらよかった。 しかし、小説の書き方に関しては本で調べても、インターネットで調べても、 「それはそうなんだけどな」とか「書いてあることは分かるんだけどな」と思うものしか書いていなかった。
もちろん中には役に立ったものもある。 私が小説を書いていて躓いたときに読み返すような本もある。 だけどもそれらの本は「小説の書き方」の本質とは少し違うように感じていた。
そんなときにこの「一億三千万人のための小説教室」を読んだ。 「小説の書き方は自分で見つけるしかない」、 この本にはそう書いてあった。
私は頭がスッキリする感覚を得た。 これまで小説家と呼ばれてきた人たちも、 最初は小説の書き方など分からず、 色々と迷いながら自分の書き方というものを見つけたんだろうと理解できた。
だから私も小説を書くしかない。 たくさん書いて、たくさん悩んで、たくさん迷って、 自分の小説の書き方を模索していくしかない。
ではこの本には何が書いてあるのか。 それは「どうやって自分の書き方を見つけるか」だと思う。 この本ではいかにして小説と向き合い、 小説とは何なのかを問い、 小説の書き方をどう見つけるかということが書いてある。
小説を書くために必要な20の鍵
この本の中には小説を書くための20個の鍵が隠されている。 とは言っても鍵は20個だけしかないわけではなく、 百や千、それ以上の鍵が存在している。 そしてそれらの鍵を覚えたからといって小説が書けるわけでもない。 ただ迷ったときや不安になったときにそれらの鍵が役に立つ。
示されている20の鍵はどれも驚くべき鍵だ。 さらっと読んだだけではその鍵が何のために存在しているのか分からないものも多い。 しかし、この本を読んでいくにつれて、または何度も読み返していくにつれて、 それらの鍵の重みを知ることとなる(重いわけではなく、もしかしたらものすごく軽いかもしれない)。
20の中から一つだけ鍵を紹介する(8番目の鍵)。 私のお気に入りの鍵だ。
「小説は書くものじゃない、つかまえるものだ」(引用、p.55)
小説は捕まえるものなのだ。 どういうことか知るにはこの本を読む必要がある。 私がここに書いても仕方がない。 私の答えが間違っているかもしれないし、 この答えさえも自分自身で見つけなければいけないのかもしれない。 小説を書くってそういうもの。
著者の小説愛と優しさ
「早く読んでみたいな、あなたたちの小説を。」(引用、178ページ)
この一文だけで十分に著者である高橋源一郎氏の小説愛と優しさが伝わってくる。 この一文を読むだけで「小説を書こう」という気持ちが湧いてくる。 こんな一文が書けるようになりたい。 そう強く思う。
おわりに
とても素晴らしい本に出会った。 この本を売っていた書店に感謝したい。 歳をとってからは新書のコーナーに立ち寄るようになった。 新書も面白いと感じ始めている。 だから新書コーナーが小さくなっている書店などを見かけると悲しくなってしまう。
小説とは何か、小説を書くとはどういうことか、 どうすれば小説が書けるのか、 その答えが知りたい人におすすめの一冊である。 (偉そうに言っているが私はまだ途中だ)。
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一億三千万人のための小説教室 (岩波新書 新赤版 (786))
- 作者:高橋 源一郎
- 発売日: 2002/06/20
- メディア: 新書