新書「文章の書き方/辰濃和男」感想


書籍情報

  • タイトル:文章の書き方
  • 著者:辰濃和男
  • 出版:岩波新書


感想

天声人語の元筆者である辰濃和男による文章の書き方。 「文は心である」ということを一番に考える彼の書き方はどのようなものであるだろうか。

「しかし心のゆがみは、その人の文章のどこかに現れます。」(Ⅱページより引用)ということである。 書きたい心、伝えたい心が文章に現れる。 上手いと思われたい心、カッコいいと思われたい心も文章に現れる。 「文章を人さまに見せることは、己自身の心の営みをさらけだすことでもあります。」(Ⅱページより引用)とあるように、 文章は自分の心を映し出す。 だからこそ「文は心である」なのである。

私の心はどうであろうか。 いつも「おもしろいと思ってもらいたい」と考えながら書いている私の心。 こんな心は読んだ人にはお見通しなのだろう。 だけど仕方がない。 おもしろいと思ってもらいたいのだから仕方がない。 おもしろいと思ってもらいたい心はどうすればいいのだろうか。

この作品ではたくさんの引用がなされている。 それだけ筆者の読書量、情報量がうかがえる。 新聞記者という仕事は文章を書く仕事の筆頭だとも言えるだろう。 何十年と文章と連れ添ってきた筆者だからこその言葉には重みがある。

私も一つ引用をしよう。

「何かを書きたい。書く訓練をしたい。しかし、さしあたって何を書いたらいいのかわからない。そういう場合はまず祖父母や両親のこと、きょうだいのこと、幼稚園や小学校の時の先生のこと、幼なじみや学校の友人のことなど、身近な人びとを次々に思い浮かべてみるのがいいでしょう。書きたい、と思う人が必ず出てくるはずです。」(54ページから引用)

筆者は書きたい心が大切だと述べている。 だからもし何も書きたいことが見つからないという場合は、 身近な人のことを書くと良いと教えてくれている。 これは小説でも同じである。 小説を書き始めるとき、一番最初は自分のことや身近な人のことを書くと良いとされている。 知らないことは書けないからだ。 自分や身近な人であれば自然とそれを知っている。

以上、辰濃和男の「文章の書き方」の感想を書いた。 長年文章を書き続けた筆者の文章の書き方を存分に味わうことができる素晴らしい一冊だった。