小説「あかりの湖畔/青山七恵」感想


書籍情報

  • タイトル:あかりの湖畔
  • 著者:青山七恵
  • 出版:中央公論新社


感想

芥川賞作家の青山七恵による三人姉妹の物語。 青山七恵の作品を読んでみたいと思い、手に取った。 本作品では複雑な人間関係が優しい文章で描かれている。

物語は長女である灯子の視点で語られる。 本作品は灯子を中心とした家族の物語である。

灯子たち姉妹は父親とともに湖の近くにある喫茶店(休憩所?)で生活を送っている。 喫茶店を切り盛りしているのは灯子たちと叔母の芳子で、父親は観光案内所で働いている。 母親はいない。灯子が小さい頃にどこかへ行ってしまったのだ。 そんな三姉妹とそのまわりの人々の人間関係を描く本作品。

何よりも文章が優しくて綺麗である。 とても読みやすい。 冒頭に「風がひと吹きするごとに、木々の葉先に溜まった光がしたたって歩道に落ちた。」(5ページより引用)という一文があった。 とても詩的な一文である。 私もこのような素敵な一文を書いてみたい。 さらに「湖は小さな太陽を水面に浮かべ、その形を乱さぬようそっと揺らしている。」と続く。 なぜこんなにも詩的で素敵な表現が思い浮かぶのか。 参考にしたい。

この作品では家族の大切さが描かれていると思う。 それは、三姉妹で協力して喫茶店を切り盛りする様子からだけでなく、 姉妹間の会話の多さからもうかがえる。 灯子は長女として家族を支え、 次女の悠は灯子を手伝う。 三女の花映は可愛がられることで心の支えとなっている(本当か?)。

母親との再会は決定事項であろう。 小さい頃に別れた母親と再会することは良いことかどうか。 私には分からない。 難しい問題だ。 この作品を通していろいろと考えさせられた。 両親のこと、兄弟姉妹のこと、親戚のこと、友人のこと、そして自分のこと、 考えられるうちに考えておくべきだろう。 取り返しのつかないことにならないように考えておくべきだろう。 そういった機会をこの作品は与えてくれたように思う

以上、青山七恵の「あかりの湖畔」の感想を書いた。 優しい文章に触れたい人のおすすめの作品である。 素敵な文章に触れたい人におすすめの作品である。 そして、家族の大切さに触れたい人にもおすすめの作品である。